田んぼのギャングと言われる『トビイロウンカ』ですが、山口県に住む友人が農家をやっていて、たまたまこのトビイロウンカについて聞くことができたので調べてみました。
農薬選びも、色々試しては何が良くて何がダメなのか判断が難しくて大変みたいです。
特に、西日本で発生するトビイロウンカは、夏・秋にかけて話題となるので、よくテレビでも生態や対策など放送されるそうです。
トビイロウンカに農薬は効くのか?!
ウンカ類は主に西日本で発生するイネの害虫です。
ウンカは以下の通り、3種類あります。
・トビイロウンカ
・セジロウンカ
・ヒメトビウンカ
その中でもやっかいなのが、今回記事にしている『トビイロウンカ』なんです。
トビイロウンカの名前の由来は、鳥の種類で「トビ(鳶)」に似ている茶色の体から名付けられたと言われています。
トビイロウンカは従来の農薬に耐えられる個体が増えてきています。
従来の主な農薬は、
・リディア
・アクタラ
・プリンス
・アドマイヤ
・ダントツ
・チェス
・パダン
・スタークル
などがあります。
上記の農薬に抵抗性をもつウンカ対策として、
最近では、JA全農とデュポン・プロダクション・アグリサイエンス株式会社が共同開発した『ゼクサロン』(平成30年に登録)が、育苗箱処理後、長い期間で効果が継続されると期待されています。
トビイロウンカが多発するところには、絶対的に薬剤防除が必要となります。
ウンカの見分け方は?!
ウンカ類(トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ)は、成虫の大きさは、
4〜5mmほどなので、肉眼での見分け方は難しいです。
見分けるにはルーペなどが必要です。
それぞれのウンカの主な特徴
【トビイロウンカ】
・セジロウンカ、ヒメトビウンカよりも大きい
・体が茶色なので、背中に帯のあるヒメトビウンカ・セジロウンカと区別ができる
・主に秋に発生するので『秋ウンカ』と呼ばれている
・坪枯れという重大な被害を発生させる
・主に西日本に生息、東北ではほとんど発生しない
【セジロウンカ】
・ヒメトビウンカよりやや大きい
・背中にはっきりとした白い帯がある
・ヒメトビウンカよりも頭部が突き出ている
・7~8月に発生するので『夏ウンカ』とも呼ばれている
【ヒメトビウンカ】
・セジロウンカ、トビイロウンカと比べるとやや小型
・オスの背中には黒、メスの背中には茶色の帯がある
・イネ以外にも他のイネ科植物を食べるので、一年中日本国内で生息している
トビイロウンカの被害は?!
ビイロウンカは、根元付近で吸汁することで加害となります。特に、出穂後に被害が多く、黄色に枯死してしまいます。
上記で「坪枯れ」とありましたが、集中して大量発生するために、急激に枯れていくことを「坪枯れ」と言います。
今年8月には岡山県でもトビイロウンカの被害が甚大で新聞にも掲載されていました。
害虫トビイロウンカ 岡山県が警報 稲枯れ被害の拡大懸念:山陽新聞デジタル|さんデジ
福岡県でも過去最大の大量発生に生産者は落胆しているそうです・・・。
行橋市内でも大量に発生し、稲作に大打撃を与えているトビイロウンカに関する記事です。
— 行橋案内人(福岡・京築) (@YukuhashiCity) September 20, 2020
「過去最悪だ」ウンカ大発生で稲作大打撃 肩を落とす生産者(西日本新聞)https://t.co/nM7nTWXz3y
トビイロウンカの被害の写真もTwitterでは結構アップされています。
トビイロウンカの被害が広がってくるとこうなる。恐ろしや。 pic.twitter.com/nbJk0d42JL
— Kensuke Nakata (@cyclosa_sp) September 20, 2020
山口県に住む友人も、県からの警報に焦っていました・・・。
トビイロウンカは山口県で警報も 病害虫発生予報 農水省|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞
このように、西日本を中心に毎年、トビイロウンカ発生による警報や注意報が発令されています。
トビイロウンカの生態は?!
トビイロウンカは特に西日本に多く、九州より北では越冬が困難と言われています。
九州では5月頃、西日本は6月から7月にかけて飛んできて、年に4回前後発生します。
寿命は約1ヶ月ですが、700粒ほどの卵を産み込みます。
約1週間で孵化して、幼虫は根元にはびこり成虫になります。
トビイロウンカは、イネ属だけに発生します。
また、9月、10月に大量発生するので、『秋ウンカ』とも呼ばれます。
トビイロウンカは、江戸時代に起こった大飢餓(天保とか、日本史で習いましたよね)のきっかけとなったと言われています。
江戸時代では、トビイロウンカは、いったいどこから飛来してくるのかはわかっていなかったそうです。
近年になって、トビイロウンカは日本で越冬するには寒すぎるということで、アジア大陸で冬をやり過ごすそうです。
そして、暖かくなった6月から7月にかけて、日本へと飛来してくるのです。
トビイロウンカに天敵はいるの?!
このテの生物には天敵がいるはずです。
友人に聞いたところ、一般的には、すずめ、トンボ、クモ、カエルなどがトビイロウンカを食べてくれるそうです。
更には、最近ではカメムシだったり、今は、カタグロミドリカスミカメがバツグンの効果を発揮する天敵とのこと。
国立研究開発法人『農業・食品産業技術総合研究機構』の研究データによると、
カタグロミドリカスミカメをイネ付近に放っておくと、トビイロウンカの増殖率を半分以下に激減させることがわかっています。
ちなみに、カタグロミドリカスミカメって、あの亀かと思ってましたが、実際は虫なんですね。
沖縄の水田で見つけたカスミカメ。これがイネ害虫であるウンカ類の卵捕食者であるカタグロミドリカスミカメってやつかな?初めて認識したかも。緑色が美しい。
— 🕷️バブウンサイ (@Baboon_sai) October 1, 2016
農研機構:https://t.co/lW15wVsQF8 pic.twitter.com/38H29JP6li
まとめ
いやー、トビイロウンカは農家の天敵だったんですね。雑学好きな小生にとっては、とても良い勉強となりました。
しかし、怖いのは農薬に適応する力ですね。今効果のある農薬もいつかは全く効かなくなるのでしょうか。